鶏論KEIRON

黄身の色が濃い卵のほうが栄養価が高い?

濃い黄身と薄い黄身、その違いはどこから来るのか

濃いオレンジの黄身と淡い黄色の黄身。どちらが良い卵かを問う

卵売り場で黄身の色を見比べると、濃いオレンジのものと、淡い黄色のものがあります。なんとなく「濃いほうが栄養がありそうでよい卵」だと感じる人は多いはずです。

でも、その色の濃さは、栄養の多さを表しているわけではありません。黄身の色を決めているのは、栄養ではなく鶏が食べた餌です。

では、色と栄養や品質は、どこまで関係するのでしょうか。ポーランドの研究チームが、4種類の植物と合成色素を鶏の餌に混ぜ、卵の色・栄養・日もちを比べました。そこには、色の濃さだけでは説明できない結果が並んでいます。

黄身の色を決めているのは「餌」

日本のスーパーに並ぶ卵は、黄身の色の濃さを特徴にうたったものが目立ちます。これは「濃い=新鮮で栄養がありそう」という買い手の感覚に合わせて、餌に色のもと(パプリカやマリーゴールドなどの色素)を配合しているから。黄身の色は鶏の品種ではなく、餌で決まります。同じ鶏でも、餌に色素が多ければ黄身は濃く、少なければ淡くなります。

この「色のもと」がカロテノイド(植物がもつ黄やオレンジの色素)です。鶏は体内で作れず、すべて餌から取り込みます。つまり黄身の色は、その鶏が何を食べたかの記録であって、栄養が多いか少ないかの目印ではないのです。なお、そもそも黄身が赤や緑でなく「黄色」に見える仕組みは、別の記事(卵の黄身はなぜ黄色い?)でくわしく扱っています。

どうやって比べたか

使った「色のもと」は、マリーゴールド・カレンデュラ(キンセンカ)・バジル・タンポポの4種類の植物。花や葉を乾かして粉にし、餌に少なめ〜多めに混ぜます。これを、比べるための基準(対照)として合成の着色料を加えた飼料のグループ(以下「合成色素の卵」)とともに、約4週間育てて卵を比べました。つまり、餌だけを変えた5つのグループの卵を見比べた実験です。

いちばん濃いのは合成色素、植物ならマリーゴールド

マリーゴールド・カレンデュラ・バジル・タンポポと、それぞれが黄身に与える色
餌に混ぜた植物ごとに、黄身の色は変わる(濃い順に、マリーゴールド>カレンデュラ>タンポポ>バジル)。

黄身の濃さでトップは合成色素の卵でした。植物ではマリーゴールドがそれに迫り、バジルは薄い黄色にとどまります。しっかり濃いオレンジを出せたのは、合成色素とマリーゴールドだけでした。

目によい成分(カロテノイド)が多いのは、マリーゴールドだけ

黄身の色のもとであるカロテノイドは、ルテインやゼアキサンチンといった目の健康に役立つ成分でもあります。その量を測ると、ずば抜けて多かったのはマリーゴールドだけ。ほかの植物や合成色素の卵はどれも同じくらいで、マリーゴールドはそのおよそ3倍でした。

ここで増えるのは、あくまでこの色素由来の成分(カロテノイド)です。タンパク質やビタミン全般が増えるわけではありません。しかも、タンポポ・カレンデュラ・バジルは合成色素の卵と大差なく、色が濃くてもカロテノイドは普通という卵もありました。色の濃さと、この成分の量は、きれいには一致しないのです。

酸化への強さは、色では決まらなかった

卵の脂は時間とともに酸化して劣化します。その酸化のしにくさ(抗酸化力)を測ると、色の見た目とは結びつかない結果が出ました。酸化に強かったのは、色の濃いマリーゴールド色の薄いバジルの卵。どちらも、基準にした合成色素の卵にくらべて酸化をおよそ4分の1まで抑えました。一方、いちばん色の濃い合成色素の卵は、酸化に弱い側でした。つまり、濃いのに弱い卵も、薄いのに強い卵もある——酸化への強さは、黄身の色の濃さでは決まらないのです。

合成色素・マリーゴールド・バジルの卵で、黄身の色と酸化への強さが一致しないことを示す図

バジルは黄身の色が薄く、カロテノイド(目によい色素)も少ない。それでも酸化に強かったのは、ポリフェノール(色素とは別の抗酸化成分)が黄身に移ったからだと考えられています。逆に合成色素の卵は、植物のような付随成分を持たないぶん、酸化に弱かったとみられます。

NOTE

色が薄い=栄養がない、ではない

黄身の色の好みは地域でかなり違い、北欧では淡い黄色が、南欧では濃いオレンジが好まれます。同じ「よい卵」でも、どんな色を“おいしそう”と感じるかは文化しだい。色の濃淡は品質のランクではなく、好みと餌の違いです。

4タイプで見ると

  • マリーゴールド=優等生:色が濃く、目によい成分(カロテノイド)も多く、酸化にも強い。見た目と中身が一致。
  • 合成色素=見た目だけ:色はいちばん濃いのに、栄養は普通で、いちばん酸化しやすい。
  • バジル=地味な実力派:色は薄いのに、酸化への強さはトップクラス。
  • カレンデュラ・タンポポ=平均的:色も栄養も中くらい。

色の濃さと、栄養や日もちは、別々に動く——それがこの研究の結論です。

まとめ:色で選ばなくていい

  • 黄身の色を決めるのは。色の濃さは、新鮮さや栄養の多さとは直結しない。
  • 色が薄くても、酸化に強く体によい成分をもつ卵はある。淡い黄色=品質が低い、ではない
  • 合成色素で濃く見せた卵は、色は最高でも酸化に弱いことがある。

卵を選ぶときは、黄身の色の濃さを“良し悪しの目印”にしなくて大丈夫。賞味期限・産地・飼い方を見れば十分です。「濃い黄身」をうたう卵が少し割高でも、色だけを理由に選ぶ必要はありません。次に売り場で色を見比べたら、それは「中身の差」ではなく「餌の違い」だと思い出してください。


出典情報

  • 原著:Plant Carotenoids as Pigment Sources in Laying Hen Diets — Effect on Yolk Color, Carotenoid Content, Oxidative Stability and Sensory Properties of Eggs
  • 掲載誌:Foods(MDPI)10(4), 721/発表:2021年4月1日
  • DOI10.3390/foods10040721ライセンス:CC BY 4.0

本文の色・カロテノイド量・酸化のしにくさ・4植物源の比較は、この研究によります。

  • 黄身の色の好みの地域差(北欧は淡い/南欧は濃いオレンジ):欧州で一般に知られる傾向

関連する記事