
スーパーの卵売り場には、SサイズからLLサイズまで、大きさの違う卵が並んでいます。同じような値段なら大きいほうが得な気がするし、大きい卵のほうが中身がしっかりして栄養も多そう。そう思って、つい大きめのパックに手が伸びます。
でも、卵が大きくなって増えるのは、その多くが白身です。中身の割合も、栄養のかたよりも、白身と黄身に分けて見ていくとはっきりします。
では、卵の大きさは何で決まるのか。大きい卵では、白身と黄身のどちらが増えるのか。そして、栄養で選ぶなら、どのサイズがいいのか。日本の規格と、卵の成分データからたどります。
卵の大きさは「鶏の年齢」で決まる
日本で売られている卵は、重さでSS・S・MS・M・L・LLの6段階に分けられています。いちばん小さいSSが40g台、いちばん大きいLLが70g台。ふだんよく見るMサイズは58〜64gです。この区分は、農林水産省が定めた規格にもとづいています。
この大きさをおもに決めているのは、卵を産む鶏の年齢です。産みはじめの若い鶏は小さい卵を産み、月齢が進んで体が育つにつれ、産む卵も大きくなります。SサイズとLLサイズは、中身がまったく別ものというより、同じ鶏が育っていく過程で大きくなったもの。だから「大きい卵=特別に栄養をためこんだ卵」というわけではありません。
大きくなるのは、ほとんどが「白身」
卵は1個ぜんたいを重さで見ると、およそ白身6・黄身3・殻1の割合でできています。卵が大きくなるとき、この3つが同じ比率で増えるわけではありません。
大きい卵ほど、白身の割合が高くなります。産む鶏が育つと、白身をつくる部分(卵管)が発達して、白身を多く出せるようになるためです。黄身も少しは大きくなりますが、白身ほどではありません。「大きい卵は黄身も大きい」というイメージは半分だけ正しく、大きくなる分の多くは白身が占めます。結果として、卵が大きくなるほど、黄身の占める割合はむしろ下がっていきます。

栄養が詰まっているのは「黄身」
白身と黄身では、中身がまるで違います。
白身は、その約9割が水分です。残りはほとんどがタンパク質で、脂質やビタミン、鉄はごくわずかしかありません。いっぽう黄身には、脂質・ビタミンA・ビタミンD・ビタミンE・鉄・亜鉛などが集まっています。同じ重さで比べても、鉄もビタミンAも、黄身には多く含まれ、白身にはほとんど入っていません。
つまり、卵の「栄養」と聞いて思い浮かべるビタミンやミネラルの多くは、黄身に入っています。白身は、良質なタンパク質の供給源。ふたつは役割が分かれています。

大きい卵で増えるのが主に白身だとすれば、多くなるのはおもに水分と、いくらかのタンパク質です。黄身に集まるビタミンや鉄は、卵が大きくなってもほとんど変わりません。「大きい卵はそのぶん栄養も多い」とは、単純には言えないわけです。
では、栄養で選ぶなら、どうすればいいのか。
黄身を使いたいなら、小さめの卵
ここから、少し意外です。黄身をしっかり使いたいときは、大きい卵より小さめの卵のほうが向いています。
黄身の大きさは、卵のサイズが変わってもそれほど変わりません。つまり、大きい卵を1個割っても、小さい卵を1個割っても、とれる黄身の量は大きくは違わない。ちがうのは、まわりについてくる白身の量です。黄身を多く使うお菓子作りや、黄身を使う料理では、大きい卵で白身を持て余すより、小さめの卵を必要な数だけ割るほうが、白身のムダが少なくてすみます。小さめの卵は1パックの値段も抑えめなことが多く、その点でも使いやすい。
逆に、タンパク質を多くとりたい、白身をたくさん使いたいなら、白身の割合が高い大きい卵が向いています。メレンゲのように白身を使う料理は、大きい卵のほうが効率よく作れます。
サイズは「栄養」ではなく「用途」で選ぶ
まとめると、卵のサイズごとの向き・不向きは、こう整理できます。
- 黄身を活かしたい(お菓子・卵かけご飯・黄身を使う料理):黄身の量はサイズであまり変わらないので、小さめの卵を必要な数だけ。白身を持て余さず、値段も抑えやすい。
- 白身を多く使いたい(メレンゲなど白身を使う料理):白身の割合が高い、L・LLサイズ。
- ふだんの料理でバランスよく:黄身と白身の比率が標準的なMサイズが使いやすい。
なお、黄身の色の濃さは、卵の大きさとも栄養とも別の話で、こちらは鶏の餌で決まります(くわしくは黄身の色が濃い卵のほうが栄養価が高い?)。大きさも色も、栄養の多さを見分ける目印にはなりません。
まとめ
- 卵の大きさは、おもに産む鶏の年齢で決まる。若い鶏は小さい卵、育った鶏は大きい卵を産む。
- 卵が大きくなって増えるのは、その多くが白身(ほぼ水分と、タンパク質)。ビタミンや鉄が集まる黄身は、あまり増えない。
- だから「大きい卵=そのぶん栄養も多い」とは単純には言えない。サイズは栄養で選ぶより、黄身を使いたいか白身を使いたいか、用途で選ぶのが理にかなっています。
次に売り場で大きさに迷ったら、「大きいほうが栄養がある」ではなく、「何に使いたいか」で選んでみてください。黄身をしっかり使いたい日なら、小さめの卵のほうがむしろ向いています。
出典情報
この記事は特定の一本の論文ではなく、日本の公的な規格と、食品成分・養鶏で広く知られた知見をもとにまとめています。
- 卵の大きさの区分(SS〜LLの6段階・重量40〜76g):農林水産省が定める鶏卵の規格による。
- 卵1個ぜんたいの重さの割合(およそ白身6・黄身3・殻1)、白身・黄身の役割:日本卵業協会による解説。
- 大きい卵ほど白身の割合が高く、黄身の割合が下がること(黄身の大きさ自体はあまり変わらないこと)、卵の大きさが鶏の年齢によって変わること:養鶏・食品科学で一般に知られる知見。
- 白身・黄身の成分(白身は約9割が水分でほぼタンパク質、黄身に脂質・ビタミンA・D・E・鉄・亜鉛が集まること):文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の鶏卵・卵白・卵黄の数値による。