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サルモネラ菌って、そもそも何?

食中毒でよく聞くあの菌は、どこから来て、どう防ぐのか

パックの卵と生の鶏肉。食中毒でよく聞くサルモネラ菌とは何かを問う

「サルモネラ菌」という名前は、食の安全のニュースでくり返し出てきます。生卵、卵を使った手づくりのお菓子、生の鶏肉——卵や肉にまつわる食中毒で、まず名前が挙がるのがこの菌です。でも、名前は聞いても、その正体まではよく知られていません。

とくに日本では、卵かけご飯やすき焼きの溶き卵のように、卵を生で食べるのはごく当たり前です。「生卵は危ない」と避ける国が多いなかで、私たちは生卵にほとんどためらいがありません。それでも、「サルモネラ」という言葉には、どこか身がまえてしまう。この菌は、いったい何者なのでしょうか。

先に言ってしまうと、サルモネラは特別に恐ろしい菌ではありません。動物の腸の中や身のまわりに、ごくふつうにいるありふれた細菌です。たしかに卵にまつわる食中毒の代表ですが、日本の卵は、そのための対策が進んでいます。正体とどこから来るのかを知れば、家庭で守ることはとてもシンプルです。

そもそもサルモネラとは何者なのか。卵とは、どこでつながっているのか。どんな症状が出て、家庭では何に気をつければいいのか。順にたどっていきます。

サルモネラは、どこにでもいる菌

サルモネラは、人や動物の腸の中にすむ腸内細菌の一種です。ひとくちにサルモネラといっても種類はとても多く、細かく分けると2,500種類以上が知られています(血清型という分け方での数)。

すみかは、卵にかぎりません。ニワトリやブタ、ウシといった家畜の腸にはふつうにいますし、鳥や、カメなどの爬虫類も広く持っています。自然界のあちこちにいる、ありふれた菌なのです。

この菌が食べ物を通じて口に入り、腸の中で増えると、食中毒(サルモネラ食中毒)が起きます。原因になる食べ物として多いのが、卵とその加工品、それに生の鶏肉や食肉です。

出る症状は、おなかの不調と、やや高い熱

サルモネラに汚染された食べ物を食べてから、半日から2日ほど(およそ8〜48時間)で症状が出ます。ときに、3〜4日後に遅れて出ることもあります。

おもな症状は、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢、そして発熱です。とくに38〜40℃のやや高い熱が出るのが、サルモネラ食中毒の特徴です。下痢は1日に何回も続き、多くは数日でおさまりますが、1週間以上長引くこともあります。

健康な大人なら、多くは自然に治ります。ただし小さな子どもやお年寄り、妊娠中の人、体調をくずしている人は要注意です。ひどい脱水や、菌が血液に入る重い状態(菌血症)につながることがあります。この人たちは、あとで見るように「火を通した卵」を選ぶのが安心です。

卵とサルモネラ——殻の外と、まれに“中”

では、卵とサルモネラはどこでつながっているのでしょうか。じつは卵がサルモネラを持つ道すじには、2つあります。

1つは、殻の表面につくもの。ニワトリの腸にいた菌が、産卵のときにふんと一緒に殻の外側につくケースです。これは殻の表面の汚れなので、日本では出荷前に専用の施設で卵を洗って消毒し、大部分を落としています。

もう1つが、より問題になる経路です。サルモネラを持つ親鶏では、卵をつくる卵巣や卵管に菌がいて、殻ができる前に中身へ入り込むことがあります。この場合、産み落とされた時点で、菌が卵の中にいるため(経卵感染)、外から殻をいくら洗っても、取り除けません。サルモネラが「卵の食中毒の代表」とされるのは、この“中に入る”道すじがあるからです。

卵の断面図。殻の表面についた菌は洗って落とせるが、まれに卵の中にいる菌は洗っても取れないことを手描きで示す

とはいえ、こわがりすぎることはありません。日本では、この“中に入る”汚染がもともと極めてまれです。養鶏場でも、菌を持ち込ませない対策が進んでいます。実際、市販の卵を大規模に調べた調査では、卵の中から菌が見つかるのは、およそ3万個に1個ほどという低さでした。ふつうに買った卵を、期限内に冷蔵で扱っていれば、まず心配はいりません。日本の卵が生でも食べられる仕組みは、なぜ日本では卵を生で食べられるのか? でくわしく扱っています。

食中毒は、菌が“増えた”ときに起きる

ここまでで、卵そのものの汚染はまれだとわかりました。では家庭の食中毒は、どうして起きるのでしょうか。カギは菌の数です。

サルモネラは、少ない菌でも発症することがあります。そして、食べ物の中で菌が増えれば、その危険はさらに大きくなる。サルモネラは温かいところで急速に増えるからです。

その典型が、「割り置き」——卵を割って、そのまま室温に置いておくことです。飲食店で生卵を割り置きしていて起きた食中毒が報告されていますが、家庭でも、割った卵をボウルに置いたまま時間がたてば、同じことが起こります。対策はかんたんで、卵は割ったらすぐ使い、すぐ食べる。それだけで、菌に増える時間をあたえずにすみます。

ボウルに割り入れた生卵。割ったらそのまま置かず、すぐ使うことを手描きで示す

家庭で守る、4つのこと

むずかしいことはありません。ふだんの台所で、次の4つを押さえておけば十分です。

  • 割ったらすぐ使う(割り置きしない):室温に置くと、菌が増える時間をあたえます。使う直前に割るのが基本です。
  • 心配なときは、火を通す:サルモネラは熱に弱く、中心が75℃で1分以上(黄身も白身もしっかり固まるまで)加熱すれば死にます。賞味期限が切れた卵やひびの入った卵は、生では食べず加熱を。子ども・お年寄り・妊娠中の人は、火を通した卵が安心です。
  • 生の肉や卵をさわったら、手と道具を洗う:生の鶏肉を切ったまな板や包丁、手についた菌が、そのまま生で食べるサラダなどに移る(二次汚染)のが、見落としがちな落とし穴です。生肉・生卵を扱ったあとは、手・まな板・包丁を洗ってから次へ。
  • 卵は冷蔵で、期限内に:低い温度では、菌はほとんど増えません。買ったら早めに冷蔵庫へ入れ、賞味期限内に使い切ります。

そしてもう一つ、台所の外にも注意点があります。カメなどの爬虫類を飼っている家庭は、さわったあとの手洗いを。爬虫類は高い割合でサルモネラを持っていて、食べ物とはまったく別の感染経路になります。とくに、手を口に入れがちな小さな子どもがいる家庭では気をつけます。

DATA

かつては「食中毒の主役」だった

じつはサルモネラは、かつて日本の食中毒の主役級でした。1980年代の終わりから、卵を介したサルモネラ食中毒が全国で急増し、多い年(1999年)には全国で年間800件をこえ、患者はおよそ1万2千人にのぼりました。その多くは、半熟の卵や、割り置き・ひび割れた卵で菌が増えてしまった事例です。その後、養鶏場でのワクチンや衛生管理、賞味期限の制度といった対策が進み、近年は年間数十件・数百人ほどまで大きく減りました。いまの食中毒で件数が多いのは、カンピロバクター(生や半生の鶏肉が原因になりやすい菌)やノロウイルスなどで、卵のサルモネラはかつてほど目立ちません。正しく扱えば、卵はむやみにこわがる食材ではありません。

まとめ

  • サルモネラは、動物の腸や身のまわりに広くいるありふれた細菌。卵や生の鶏肉が、食中毒のおもな原因になります。
  • 症状は吐き気・腹痛・下痢と、38〜40℃の発熱。多くは数日で治りますが、子ども・高齢者・妊婦は重症化に注意。
  • 卵では、殻の表面につくほか、まれに卵の“中”にいることも(洗っても取れない)。ただし日本の卵は、その汚染が極めて少ない。
  • 家庭で守るのは4つ。割り置きしない・心配なら加熱(中心75℃で1分以上)・生肉や卵のあとは手を洗う・冷蔵で期限内に

次に食中毒のニュースで「サルモネラ」の名前を見かけても、相手の正体は、もうわかっています。割ったらすぐ、心配なら火を通す。それだけで、卵はいつもどおり、安心して食べられます。


出典情報

この記事は特定の一本の論文ではなく、公的機関の情報と、食品衛生で広く知られた知見をもとにまとめています。

  • 菌の性質・血清型(2,500種類以上)・保菌動物・潜伏期間・症状・重症化:国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所)「サルモネラ感染症」、東京都保健医療局「食品衛生の窓」(サルモネラ属菌/サルモネラ・エンテリティディス)
  • 卵の汚染経路(殻の表面/卵の中=経卵感染)・加熱(中心温度75℃1分以上)・割り置きの回避・二次汚染の防止:東京都保健医療局「食品衛生の窓」、公益社団法人日本食品衛生協会「サルモネラ食中毒」、および自治体(保健所)による卵と食肉の衛生的な取り扱いの注意
  • 卵内のサルモネラ汚染率(市販卵の大規模調査で、卵の中から菌が見つかるのは約3万個に1個)・養鶏場のサルモネラ対策:食品安全委員会のリスク評価などで参照された調査値、農林水産省「鶏卵のサルモネラ総合対策指針」
  • 爬虫類(カメなど)の保菌と、さわったあとの手洗い:厚生労働省「ミドリガメ等のハ虫類の取扱いQ&A」
  • 食中毒統計(近年はカンピロバクター・ノロウイルスなどが上位):厚生労働省「食中毒統計資料」

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