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卵は常温で置いても大丈夫?

常温と冷蔵で、卵の鮮度はどう変わるのか

茶色い卵が1個。左に「冷蔵」、右に「常温」と道が分かれ、置き場所で卵の運命が変わるかを問う

日本のスーパーでは、卵はたいてい常温の棚に並んでいます。だから家でも、つい台所の隅に置きっぱなしにして、「卵は常温でも平気」と思っている人は多いはずです。

でも、卵は産まれた瞬間から少しずつ鮮度が落ちていく生鮮品です。そして、その落ちる速さを決めているのは、殻の色でも見た目でもなく、「どれだけ日がたったか」と「どれくらいの温度で置いたか」のたった2つでした。

南アフリカの研究チームが、産みたての卵256個を 0・10・20・30℃ の4段階の温度で、最長30日間保存し、中身の変化を測りました。結果はシンプルです。日がたつほど、そして暖かいほど、卵白も黄身もゆるんでいく。裏を返せば、冷蔵庫は、その老化を大きく遅らせます(完全に止めることはできませんが)。

では、卵はどれくらいの速さで老けるのか。常温と冷蔵で、中身は本当に違うのか。家ではどう置けばいいのか。卵を30日間追いかけたデータに、その答えがあります。

卵は、産まれた瞬間から少しずつ老ける

卵は殻に覆われているので、見た目はなかなか変わりません。けれど殻の内側では、水分が抜け、二酸化炭素(炭酸ガス)が抜けていく変化が静かに進んでいます。やがて卵白はゆるみ、黄身は包んでいる膜が弱って広がっていきます。

これは生鮮品である以上、避けられない自然な変化です。私たちにできるのは、変化を止めることではなく、その「速さ」をゆるめることだけ。そして、その速さを握っているのが「日数」と「温度」なのです。

鮮度をはかる物差し「ハウユニット」

研究の話に入る前に、言葉をひとつだけ覚えてください。ハウユニット(HU)です。1937年にアメリカのレイモンド・ハウが考えた数値で、ざっくり言えば「卵を割ったときの、卵白の盛り上がりの高さ」を卵の重さで補正したもの値が大きいほど、卵白がこんもり盛り上がっている=新しい、という合図です。

日本のパックにこの数値は書かれていませんが、卵の鮮度を語るとき世界中で使われる、いわば共通のものさしです。この記事でも、卵がどれだけ老けたかをこの数値で見ていきます。

どうやって調べたか

研究では、産みたての卵256個を集め、次の条件で保存しました。

  • 保存温度:0℃・10℃(冷蔵)、20℃(涼しい室内)、30℃(暑い部屋)の4段階
  • 保存期間:0日(産みたて)・10日・20日・30日の4段階

それぞれの卵について、重さ、卵白と黄身の盛り上がり(高さ)や広がり、卵白のハリ(ハウユニット)などを測定。冷蔵庫から、暑い部屋まで、暮らしのなかでありそうな置き方をひととおり再現して、卵の中身がどう変わるかを切り分けています。

30日で、卵白のハリは半分近くまで落ちた

まず効いていたのは、当たり前のようでいて見過ごされがちな「日数」でした。卵白のハリを示す数値(ハウユニット。高いほど新しい)は、産みたてで平均約98(おおむね90台が新しさの目安)と高かったのが、30日たつと平均約60まで低下。卵白のこんもりとした盛り上がりが、それだけ失われたということです。

産みたての卵を割ると、卵白がこんもり盛り上がる。鮮度が日数とともに下がることを手描きの下降線で示す

重さも、30日で平均約12%減りました(約67.7g→約59.4g)。減ったのは主に水分。卵の殻には目に見えない無数の小さな穴があり、そこからゆっくり水蒸気が抜けていきます。古い卵を振ると中で動く感じがするのは、中身が縮んで、殻の内側の空気の部屋が広がっているからです。

卵白がゆるむのは、この小さな穴から炭酸ガスが抜けるためです。ガスが抜けると卵白はだんだんアルカリ性に傾き、ハリを支えているタンパク質(オボムチン)の網目がほどけて、卵白が水のようにさらさら流れるようになります。目玉焼きの白身が、新しいと丸くまとまり、古いとだらりと広がるのは、この変化を見ています。

同じ日数でも、暑い場所ほど速く老ける

ここが、この研究のいちばん大事なところです。卵の老化には、「日数」と「温度」という2つのレバーがありました。しかも研究では、この2つはそれぞれ独立に卵を老けさせていました。日数が同じでも、置く温度が高いほど、卵は速く老けるのです。

割った生卵。白身が薄く広く流れ出し、鮮度が落ちたことを示す

温度の威力は、割ったときの姿にはっきり出ます。黄身の盛り上がり(高さ)は、冷蔵(0℃)で保存した卵では平均約1.8cmを保つのに、30℃ではぺちゃんこの約0.6cmまで下がりました。白身の広がりも、0℃の卵が約6cmにとどまるのに対し、30℃では約15cmと、倍以上にだらりと広がります。

つまり、同じ30日でも、冷蔵庫の卵と暑い部屋の卵では、割ったときの姿がまるで別物。研究チームの結論も明快で、「0℃の冷蔵が、卵の品質をもっともよく保つ」というものでした。

だから、家では冷蔵庫へ

日数は止められませんが、温度は自分で選べます。冷蔵は卵の老化を大きく遅らせます(止まるわけではないので、冷蔵でも早めに食べるのがおすすめです)。逆に、常温の棚に置きっぱなしにすると、卵白のハリは買った時点よりも速く落ちていきます。

「でも、日本のスーパーは卵を常温で売っているのに?」と思うかもしれません。これは手抜きではなく、冷えた卵を暑い屋外へ持ち出すと殻の表面に結露し、その水分が殻の穴から雑菌を呼び込むのを避けるための、理にかなった売り方です(くわしくは新鮮な卵は、見た目で見分けられる?で取り上げました)。差がつくのは、売り場ではなく買ったあとの持ち帰り方と、家での置き場所。寄り道せず、できるだけ早く冷蔵庫(10℃以下が目安)へ。夏場や、車内の高温には、とくに注意してください。

卵のパックを冷蔵庫の棚に入れた様子。手描きで雪のマークと「10℃以下」を添える
DATA

卵の賞味期限は、季節で日数が違う

日本のパックに印字されているのは、傷んで食べられなくなる期限(消費期限)ではなく賞味期限——「生で食べても問題のない期間」です。サルモネラ菌が増えない範囲から逆算して決められています。気温が高いほど菌は増えやすいため、生食できる日数の目安は夏(7〜9月)で約16日、春・秋で約25日、冬で約57日と、季節で大きく違います(実際の表示はこれより短めに設定されます)。期限を過ぎても、十分に加熱すれば食べられます。なお、これは日本独自の目安で、ここまでの研究とは別の話。しかも冷蔵保存を前提とした日数で、常温に出しっぱなしでよいという意味ではありません。

まとめ

  • 卵の鮮度を落とすのは「日数」と「温度」。見た目や殻の色ではありません。
  • 冷蔵は老化を大きく遅らせます。ただし止まるわけではないので、冷蔵でも早めに。
  • 常温の置きっぱなしは避け、買ったら寄り道せず、早めに冷蔵庫(10℃以下)へ

「卵は常温で置いても大丈夫?」という問いへの答えは、「短い時間なら食べられるけれど、鮮度は確実に削られていく」。買った卵をすぐ冷蔵庫に入れる、という当たり前の習慣には、データの裏づけのある、ちゃんとした意味があるのです。


出典情報

  • 原著:Assessment of Egg Quality Across Seasons, Storage Durations, and Temperatures in Commercial Laying Hens
  • 著者:Ikusika OO, Dwakasa H, Luphuzi S, Akinmoladun OF, Mpendulo CT.
  • 掲載誌:Applied Sciences(MDPI)15(19), 10344/発表:2025年9月24日
  • DOI10.3390/app151910344ライセンス:CC BY 4.0

本文のハウユニット・重さ・黄身と卵白の高さや広がり・日数と温度による変化は、この研究によります。

  • 賞味期限の季節別の日数(夏約16日/春秋約25日/冬約57日)・10℃以下での保存・結露・ハウユニットの考案(1937年):日本の公的な目安、および卵について広く知られた一般的な知見

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