鶏論KEIRON

卵の殻の色は、なぜ白・茶・青と違う?

白・茶・青・緑、色を分けるものの正体とは

濃い色の台に、白・茶・青・緑の殻の卵が横一列に並ぶ。上に手書きで「なぜ色が違う?」

スーパーでは、白や茶色の卵をよく見かけます。けれど世界には、青い殻や緑の殻の卵を産む鶏もいます。チリ原産のアローカナや、その血を引く品種です。同じ「卵の殻」なのに、なぜ白・茶・青・緑と色が分かれるのか。

この謎を、中国の研究チームが、色の違う卵の殻から色素を取り出して量を測り、その色素を作る遺伝子の働きまで調べました。

答えは、たった2つの色素

卵の殻を染めているのは、2種類の色素です。ひとつは茶色の色素、もうひとつは青緑の色素。この2色が、どれだけ・どう混ざるかで、殻の色が決まります。

  • 白い殻:どちらの色素もほとんど入っていない
  • 茶色い殻:茶色の色素が多く入っている
  • 青い殻:青緑の色素が入っている
  • 緑の殻:青緑の色素に、茶色の色素が少し混ざっている

2つの色素の量は、鶏ごとに少しずつ違います。だから殻の色も、白から濃い茶まで、薄い青から濃い緑まで、なだらかに移り変わります。同じ品種でも、まったく同じ色になるとは限りません。あとは、この2つの色素がいったい何者なのかです。

茶色は「血を作る途中」、青緑は「血を壊したあと」

左に茶色い卵、右に青い卵。茶卵から手描きで「血をつくる途中」、青卵から「血をこわしたあと」と注釈

2つの色素は、どちらも「血」から生まれます。鶏の体の中で、血の赤さのもとになる色素(ヘム)が作られ、また壊されていく、その途中で出てくる物質です。

茶色の色素(プロトポルフィリンIX)は、血を作る途中で出てきます。赤い血のもとになる材料の、ひとつ手前の段階の物質です。これが殻の表面につくと、茶色になります。

いっぽう青緑の色素(ビリベルジン)は、逆に血を壊したときに出てきます。役目を終えた血の色素が分解されるときに出る、緑色の物質です。人の体でも同じで、ぶつけたあざが青緑色になるのも、胆汁が緑がかっているのも、このビリベルジン。青緑の色素は殻の芯まで染み込むため、アローカナの青い卵は、割ると殻の内側まで青く見えます。

割れた青い卵の殻。外側だけでなく、殻の内側(裏面)まで青いことがわかる

つまり卵の殻の色は、鶏の体の中で起きている血の化学が、そのまま表に出たものです。茶色は血を作る側から、青緑は血を壊す側から生まれた色です。

緑の卵は「青と茶のブレンド」

青い卵+茶色い卵=緑の卵、という足し算の構図。実写の卵に手描きの「+」と「=」

青い卵と緑の卵は、別の色に見えます。でも土台は、どちらも同じ青緑の色素。緑の殻が緑に見えるのは、そこに茶色の色素が少し混ざっているからです。

同じ青い系統の鶏から生まれた卵でも、青みの強いものから、緑がかったもの、さらに茶色がかった濃い緑(オリーブ)まで、色には幅があります。比べてみると、緑が濃い卵ほど、茶色の色素が多く混ざっていました。青緑に茶色を少し足すと緑になり、もっと足すと濃いオリーブに近づく。「青+茶=緑」という足し算です。

色を決める「遺伝子の役割分担」

では、色素の量を決めているのは何か。遺伝子です。研究チームは、色素を作る・運ぶ3つの遺伝子が、殻を作る器官でどれくらい働いているかを確かめました。役割は、きれいに分かれていました。

  • 青を出すか、出さないか:青緑の色素を血液から殻へ運ぶ遺伝子。青い卵を産む品種では、そろって強く働いていました。これが青い殻の「入口」です。
  • 青緑をどれだけ作るか:青緑の色素を生み出す遺伝子。緑の殻でいちばんよく働き、白い殻でいちばん弱い
  • 茶をどれだけ足すか:茶色の色素を殻へ運ぶ遺伝子。茶色い殻でいちばんよく働いていました

青を出すか。青緑をどれだけ作り、茶をどれだけ足すか。この組み合わせが鶏ごとに違うので、卵の殻の色が分かれます。

殻の色は、味や栄養とは関係ない

色の仕組みはわかりました。では、殻の色で、卵の中身は変わるのか。味や栄養という点では、ほとんど変わりません。殻の色を決めるのは色素と品種、中身の栄養を決めるのは、おもに鶏のエサです。白い卵と茶色い卵で、中身に大きな差はありません。

同じパックの茶色い卵でも、濃い卵と薄い卵が混ざることがあります。茶色の色素は鶏が歳をとるほど減っていくため、産んだ鶏の年齢の差が出ている場合があります。色の濃い・薄いは、品質の差ではありません。

まとめ

  • 殻の色は2つの色素で決まる:茶色の色素と、青緑の色素。白・茶・青・緑は、この2色の量と混ざり具合の違い。
  • 2つの色素は「血」から生まれる:茶色は血を作る途中、青緑は血を壊したあとに出る色素(人のあざと同じ)。
  • 緑は青と茶のブレンド:青緑の色素に茶色が混ざるほど、緑が濃くなる。
  • 色は品種(遺伝子)で決まり、味や栄養とは別:中身の栄養を決めるのは、おもにエサ。

白い卵も、青い卵も、殻の色は鶏の体の中の化学が表に出たしるしです。色が濃いか薄いか、青か緑かは、品質ではなく、2つの色素のさじ加減です。


出典情報

  • 原著:The pigments in eggshell with different colour and the pigment regulatory gene expression in corresponding chicken’s shell gland
  • 著者:Wang H, et al.(中国)
  • 掲載誌:Animal 17(5), 100776/発表:2023年5月
  • DOI10.1016/j.animal.2023.100776ライセンス:CC BY-NC-ND 4.0

本文の2つの色素(プロトポルフィリンIX・ビリベルジン)と殻の色の対応青い系統の4色+白・茶の6グループ比較色素を作る・運ぶ3つの遺伝子(SLCO1B3・HMOX1・ABCG2)の役割分担緑=青と茶のブレンドは、この研究によります。

  • プロトポルフィリンIX=血の色素(ヘム)を作る途中の物質/ビリベルジン=ヘムを壊したときに出る色素(あざ・胆汁の色):生化学で広く知られた知見
  • 茶色の色素が加齢で減り、茶殻の色が薄くなる:Samiullah ら(2018年、別研究)
  • 白い卵と茶色い卵で、中身の栄養に大きな差はない:一般的な食の知見
  • アローカナの青い卵・青い殻が内側まで青いこと:養鶏・食の一般情報

関連する記事