鶏論KEIRON

黄身がふたつの卵は、なぜできるの?

ふつうは黄身ひとつ。なぜ、ときどきふたつ入るのか

ボウルに割り入れた卵から、黄身がふたつ並んでのぞく。上に手書きで「なぜ黄身がふたつ?」

卵を割ってボウルに落としたら、黄身がふたつ。少し得をした気分になります。めったに出会わないので、双子の卵とも呼ばれます。

でも、これは珍しいだけで、変わったことが起きているわけではありません。黄身がふたつの卵(二黄卵)の多くは、卵を産みはじめたばかりの若い鶏が産みます。

なぜ若い鶏に多いのか。食べても大丈夫なのか。そして、二黄卵から双子のヒヨコは生まれるのか。黄身がふたつになる仕組みと、日本での売られ方から、その答えをたどります。

黄身がふたつになるのは、排卵が「重なる」から

黄身がふたつ入るのは、排卵が重なったからです。まず、ふつうの卵ができる流れから見ます。

鶏の体の中では、黄身がひとつずつ順番に育ち、熟すと卵巣から送り出されます。これが排卵です。送り出された黄身は、細長い管(卵管)をゆっくり下りていきます。その間に白身と殻をまとい、丸一日ほどかけて一個の卵になります。大人の鶏では、この「黄身ひとつ→卵ひとつ」のリズムがきちんと保たれています。

二黄卵は、このリズムがずれて、黄身がふたつ続けて送り出されたときにできます。ふたつの黄身が近いタイミングで卵管に入り、いっしょに白身と殻で包まれる。その結果、ひとつの殻の中に黄身がふたつ入ります。黄身が途中で増えるのではなく、本来ひとつずつのはずの排卵が重なることで起きる現象です。

割った卵をふたつ並べた写真。左はふつうの黄身ひとつ、右は二黄卵で黄身がふたつ。手書きで「ふつう=黄身ひとつ」「二黄卵=排卵が重なって黄身ふたつ」

二黄卵は、産みはじめた若い鶏に多い

では、なぜリズムがずれるのか。いちばん多いのは、鶏が卵を産みはじめたばかりの時期です。

鶏が卵を産みはじめるのは、生後5か月ほど。この産みはじめの数週間から数か月は、排卵を調節するホルモンのはたらきがまだ安定していません。そのため黄身がふたつ出てしまうことがあり、二黄卵はこの若い時期に集中します。体が産卵に慣れてリズムが整うと、二黄卵はほとんど出なくなります。

二黄卵はもともとめずらしく、卵全体でならおよそ千個に一個ほど(諸説あります)。ただ、その多くが若い鶏の産みはじめに偏っています。だから、若い鶏ばかりの群れからは、二黄卵がふだんよりずっと高い割合で出てきます。年をとった大きな鶏や、出やすい品種・血統もありますが、いちばん多いのは、やはり産みはじめの若い鶏です。

産みはじめの若い鶏と、その卵。手書きで「産みはじめの若い鶏に多い/リズムが整うと出なくなる」

スーパーで見かけにくいのは、選別で分けられるから

二黄卵は身近なようで、スーパーのパックではあまり見かけません。理由のひとつは数の少なさ、もうひとつは、出荷前の選別で通常のパックから外れることです。

日本の卵は、産まれたあとGPセンターと呼ばれる施設で、洗って・調べて・重さごとに分けてから出荷されます。ここでは卵に光を当てて中を透かす検査(検卵)で、血の混じった卵やひび割れなどが見分けられ、取り除かれます。二黄卵はこうした不良品ではありませんが、黄身がふたつある分だけ大きく重いため、決まった重さでパック分けする流れからは外れます。

いっぽうで、二黄卵をあえて集めて売る養鶏場もあります。若い鶏の群れをもつ農場では二黄卵が多く出るため、それを「双子たまご」としてまとめ、ネット通販や直売所で売っています。ふたつ入りのめずらしさから縁起物あつかいされ、「幸せを呼ぶ卵」の名で並ぶこともあり、専用の自動販売機を置く産地もあります。

卵を手に持ち、下からの光で中を透かして見る検卵の様子。うしろに卵のトレーが並ぶ。手書きで「二黄卵は大きすぎて通常パックから外れる」「めずらしいので直売も」

二黄卵から、双子のヒヨコは生まれるのか

最後に、いちばん気になるところ。黄身がふたつなら、そこから双子のヒヨコが生まれるのか。答えは、二羽そろっては、ほとんど生まれません

そもそも、スーパーで売られている卵の多くは無精卵で、オスと交わっていないため、温めてもヒヨコにはなりません。これは二黄卵でも同じです。

では、仮に有精卵で、ふたつの黄身が両方とも受精していたら——。それでも、二羽そろって生まれることは、まずありません。ひとつの殻の中は、二羽が育つには狭すぎて、酸素も足りないからです。実際に、二黄卵をたくさん温めて調べた研究があります。両方の黄身が育ちはじめた卵からは、一羽も孵りませんでした。いっぽう、片方の黄身だけが育った卵からは、ふつうにヒヨコが孵ることもあります。人の双子のように、ひとつの卵から二羽がそろって生まれる——そういうことは、ほぼ起きません。

まとめ

  • 黄身がふたつの卵(二黄卵)は、排卵のリズムが重なって、黄身がふたつ続けて出たときにできる。黄身が途中で増えるわけではない。
  • いちばん多いのは、産みはじめたばかりの若い鶏。ホルモンのはたらきが安定すると、ほとんど出なくなる。
  • スーパーで見かけにくいのは、数が少ないうえ、大きすぎて通常のパックの規格から外れるから。若い群れをもつ農場では多く出て、縁起物として売られることもある。
  • 二羽そろって生まれることは、まずない。ひとつの殻の中は狭く酸素も足りず、両方の黄身が育っても孵らない。

次に卵を割って黄身がふたつ出てきたら、それは若い鶏が産みはじめのころに産んだ、めずらしい一個だと思い出してください。


出典情報

この記事は特定の一本の論文ではなく、公的機関・業界の情報と、養鶏や食品科学で広く知られた知見をもとにまとめています。

  • 二黄卵のでき方(排卵の重なり)、産みはじめの若い鶏に多いこと、食べても問題ないこと:JA全農たまご等による鶏卵の解説、および養鶏・食の一般的な知見
  • GPセンターでの検卵(透過光による血卵・ひび割れ・異常卵の検査)と重量による選別:鶏卵の選別・包装(GP)に関する一般的な知見
  • 二黄卵が縁起物として通販・直売所・自動販売機などで売られること:養鶏場・産地の一般情報
  • 両方の黄身が受精して二羽が育ちはじめた二黄卵から、そろって孵ることはほとんどないこと(狭さと酸素不足で育ちにくい/片方だけ受精した二黄卵はふつうに孵ることもある):二黄卵の受精・孵化を調べた研究(Development of Chicken Embryos in Double-Yolk Eggs: Fertility, Hatchability, Embryo Malposition and Time of Embryonic Mortality, Animals 2023)ほか

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