鶏論KEIRON

ニワトリはなぜ、砂を浴びるの?

水で洗わないのに、なぜ砂にまみれるのか

明るく清潔な地面のくぼみにうずくまり、片方の翼を広げて砂を浴びるニワトリの実写写真。手書きの文字で「なぜ砂を浴びるの?」

公園のすみや道ばたで、スズメが土の上にうずくまり、羽をふるわせて砂をかぶっているのを見たことはないでしょうか。水気のない乾いた地面で、わざわざ砂まみれになる。遊んでいるようにも、体を汚しているようにも見えます。

ニワトリも、これとよく似たことをします。足で地面をかいてくぼみをつくり、そこに寝転がって、羽の間に砂を投げ入れる。この行動を「砂浴び(すなあび)」といいます。

でも、それは逆です。砂浴びは、ニワトリが体を清潔に保つための手入れ——水を使わない鳥の、お風呂がわりの習慣です。乾いた砂が、どうやって羽をきれいにするのか。そして砂浴びは、砂がない場所でもやろうとするほど、ニワトリにとって大切な行動でもあります。研究からたどってみます。

水ではなく、砂で手入れする

鳥の体の洗い方は、一通りではありません。冒頭のスズメは、砂浴びもすれば、水たまりや浅い水場での水浴びもします。両方を使い分ける、鳥のなかではめずらしいタイプです。

では、ニワトリはどうか。ニワトリは、カモやアヒルのように水につかって体を洗うことは、ほとんどしません。羽の手入れは、もっぱら乾いた砂や土でおこないます。水浴びをするか砂浴びをするかは鳥によって違い、ニワトリは砂浴びのほうにかたよったタイプです。

もとをたどると、ニワトリの祖先は東南アジアの森の地面で暮らしていた鳥(セキショクヤケイ)で、水辺の鳥ではありません。濡らして洗うよりも、乾いた砂を「洗い粉」のように使うほうが、地上で暮らす鳥には合った手入れのしかただった——それが、水を使わない砂浴びという習慣として受けつがれています。

では、乾いた砂は羽に何をしているのか。大きく二つあります。余分な脂を吸い取ることと、羽にひそむ虫を落とすことです。

余分な脂を、砂が吸い取る

鳥は、尾のつけ根にある脂(あぶら)の出る腺(尾脂腺)から、脂をくちばしで羽にぬって、羽を守っています。ただ、この脂は多すぎると、かえって羽をべたつかせ、ふんわりした状態を損ないます。

砂浴びの砂は、この余分な脂を吸い取るはたらきをします。それを確かめた研究があります。採卵鶏を33日間砂浴びできないようにすると、背中の羽についた脂の量が少しずつ増えていきました。ふたたび砂浴びをさせると、2日ほどでもとの量に戻り、羽の下側のやわらかい部分(綿羽)が、またふんわりと立ちました。

羽がやわらかく立っていることには、意味があります。羽の間に空気の層を多く抱えられるほど、体の熱は逃げにくくなる。砂浴びは、羽を保温のきく状態に保つ手入れでもあります。

ただし、ひとつ注意が要ります。「砂浴びは余分な脂を取るためだけのもの」と単純に言い切ることはできません。別の研究で、脂の出どころである尾脂腺そのものを取り除いたニワトリを調べたところ、脂の供給を断たれてもなお、むしろふつうのニワトリより熱心に砂浴びをしたがりました。しばらく砂浴びをさせると、羽の脂の量にも差は見られませんでした。羽の脂の量だけが砂浴びを決めているのではない、ということです。余分な脂を吸い取るのは、砂浴びのはたらきの一つであって、すべてではありません。

羽にひそむ虫を、落とす

砂浴びには、もう一つはっきりした役目があります。羽や皮膚につく小さな虫を落とすことです。

ニワトリの羽の間には、ダニやハジラミといった外部寄生虫——羽や皮膚について血や羽くずを食べる小さな虫——がすみつくことがあります。これがふえると、ニワトリはかゆがり、弱っていきます。

採卵鶏でしらべた研究では、砂浴びをしたニワトリは、1週間で外部寄生虫が80〜100%減りました。砂に何をまぜるかも比べられ、砂やこまかい土(珪藻土)でも寄生虫は減り、硫黄をまぜた砂はとくに強力で、砂浴びをしなかったニワトリの分まで、数週間のうちに一掃しました。水を使わないニワトリにとって、砂浴びは体につく虫を減らすための大事な手立てです。

砂のくぼみで体を激しくふるわせ、砂ぼこりを飛ばすニワトリの実写写真。手書きの文字で「砂ごと、脂も虫も落とす」

砂浴びのしかた

砂浴びには、決まった段取りがあります。

まず、足で地面をかき、くちばしでほじって、浅いくぼみをつくります。そこに羽を逆立ててしゃがみこみ、寝転がって、翼や脚を使って砂を羽の間に投げ入れます。しばらく砂を皮膚までなじませたら、最後に立ち上がり、激しく体をふるわせて砂を振り落とします。このとき、砂といっしょに、余分な脂や汚れ、虫が落ちていきます。

一回の砂浴びは、おおむね20〜30分ほど。頻度は、じゃまが入らなければ2日に1回ぐらいで、時間帯は昼過ぎに多くなります。しかも、群れで飼われているとみんなでいっせいに砂浴びを始めることがあります。1羽が始めると、つられてまわりも始める。日なたに数羽が寝転がって砂を浴びる姿は、のんびりして見えて、羽の手入れの真っ最中です。

日なたの地面で、数羽のニワトリが並んで寝転がり、いっせいに砂を浴びている実写写真。手書きの文字で「2日に1回・昼過ぎ・みんなで」

砂がなくても、その動作をする

砂浴びが、ニワトリにとってどれほど大切な行動か。それがよく分かるのは、砂のない場所でのニワトリのふるまいです。

床が金網だけで、砂も土も敷いていないケージで飼われると、ニワトリは砂がないのに砂浴びの動作をしてしまうことがあります。ありもしない砂をかき、羽を広げて投げ入れるしぐさをし、体をふるわせる。これは「空(から)砂浴び」と呼ばれます。さらに、しばらく砂浴びをさせずにおくと、ようやく砂を与えられたとき、ふだんより長く、激しく砂浴びをします。やりたい気持ちがたまっていた、というしるしです。

つまり砂浴びは、あってもなくてもいい遊びではなく、ニワトリに深く組み込まれた欲求です。このことは、ニワトリの飼い方をめぐる議論にもつながっています。ヨーロッパでは、身動きのとりにくい従来型のケージが2012年に禁止され、かわりに認められたケージにも、ニワトリが地面をつつき、かいて、砂浴びできる敷きものを用意することが求められました。砂浴びのできる環境は、ニワトリが健やかに暮らすための土台の一つと考えられています。

まとめ

  • ニワトリは水にはあまりつからず、乾いた砂で羽を手入れする。祖先は森の地面で暮らす鳥で、その習性を受けついでいる。
  • 砂は羽についた余分な脂を吸い取り、羽のかさを保つ。かさのある羽は、体の熱を逃がしにくく、保温に役立つ(ただし砂浴びの役目は、脂を取ることだけではない)。
  • 砂は羽にひそむダニやハジラミを落とす。砂浴びをしたニワトリでは、外部寄生虫が1週間で80〜100%減った。
  • 砂浴びには段取りがあり、2日に1回・約20〜30分・昼過ぎに、群れで一緒におこなうことが多い。
  • 砂がないと空砂浴びをし、我慢させると反動が出る。砂浴びは、ニワトリにとって欠かせない行動。

次に、スズメが道ばたの土で砂を浴びているのを見かけたら、それは体を汚しているのではなく、水を使わない鳥なりの、念入りな身づくろいです。ニワトリも、同じことを毎日くり返しています。


出典情報

主要原著(本記事の中心=砂浴びと羽の手入れ・保温)

  • 原著:van Liere DW, Bokma S「Short-term feather maintenance as a function of dust-bathing in laying hens」(Applied Animal Behaviour Science 18(2), 197-204/1987年)
  • DOI10.1016/0168-1591(87)90193-6(要旨は無料で読めます/全文は購読)

本文の砂浴びをやめさせると背中の羽の脂の量が増え、砂浴びを再開すると2日ほどでもとに戻ること羽の下側のふわふわした部分(綿羽)がふんわりと保たれることは、この原著によります(33日間の砂浴び制限で、羽1グラムあたりの脂の量が平均10.3ミリグラムから14.5ミリグラムへ増え、再開後2日で回復)。

補足資料(各テーマの出典)

  • 砂浴びをしたニワトリで、羽や皮膚につく外部寄生虫(ダニ類・ハジラミ)が1週間で80〜100%減ること、材料では硫黄がとくに強力だったこと:Martin CD, Mullens BA「Housing and dustbathing effects on northern fowl mites (Ornithonyssus sylviarum) and chicken body lice (Menacanthus stramineus) on hens」(Medical and Veterinary Entomology 26(3), 323-333/2012年/DOI 10.1111/j.1365-2915.2011.00997.x)。要旨は無料で読めます。
  • 「砂浴びは余分な脂を取るためだけのものではない」こと(尾脂腺を取り除いても砂浴びの意欲はむしろ高く、羽の脂の量にも差が出なかった):Nørgaard-Nielsen G, Vestergaard K「Dustbathing behaviour of uropygial gland extirpated domestic hens. Effects of dust deprivation」(Acta Veterinaria Scandinavica 22(1), 118-128/1981年/DOI 10.1186/BF03547213)。全文を無料で読む(英語)
  • 砂浴びの一連の動作、1回の所要時間(およそ20〜30分)、頻度(じゃまが入らなければ2日に1回程度)、昼過ぎに多いこと、地上性の鳥にとっての機能:Olsson IAS, Keeling LJ「Why in earth? Dustbathing behaviour in jungle and domestic fowl reviewed from a Tinbergian and animal welfare perspective」(Applied Animal Behaviour Science 93(3-4), 259-282/2005年/DOI 10.1016/j.applanim.2005.01.018)ほか、砂浴びの行動研究による。
  • 群れで飼うと砂浴びが同調しやすく、昼過ぎに多くの個体が一緒におこなうこと:Campbell DLM ほか「Dust bathing in laying hens: strain, proximity to, and number of conspecifics matter」(Poultry Science 99(9), 4103-4112/2020年/DOI 10.1016/j.psj.2020.05.023)。全文を無料で読む(英語)
  • 砂のないケージでの「空砂浴び」や、砂浴びを我慢させたあとの反動が、砂浴びの強い動機づけを示すこと:砂浴びの動機づけに関する行動研究の知見(Vestergaard ほか、上記 Olsson & Keeling 2005 のレビューにまとめられている)。
  • ヨーロッパで従来型のケージが2012年に禁止され、かわりに認められたケージに、ニワトリが地面をかいて砂浴びできる敷料エリアの用意が求められたこと:EU理事会指令 1999/74/EC(採卵鶏の保護に関する最低基準を定めた欧州連合の公的規制)。
  • ニワトリの祖先が東南アジアの森林の地上で暮らすセキショクヤケイであること:ニワトリの起源に関する一般的な知見。

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