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生卵は、冷凍できないの?

凍らせていい卵と、そうでない卵は何が違うのか

卵のパックが冷凍庫の扉の前にあり、「冷凍できる?」と問う。凍らせていい卵かを考える場面

料理で卵が一つだけ余った。そんなとき、冷蔵庫の残りが心配で、つい冷凍庫に手が伸びます。でもそこで、「生卵って、冷凍していいんだっけ?」と手が止まる人は多いはずです。殻ごと入れたら割れそうだし、なんとなく、卵は冷凍に向かない気がする。

結論から言うと、卵は冷凍できます。冷凍庫に入れれば、卵は数日どころか数週間もちます。ただし、たった一つだけ守ることがあります。「殻のまま、そのまま」凍らせてはいけない、ということです。

では、どんな形なら凍らせていいのか。凍らせた卵は、解凍したあとどうなるのか。そして、殻ごと冷凍がなぜ注意を要するのか。卵の冷凍をめぐる、いくつかの分かれ目をたどります。

殻のまま凍らせると、殻が割れる

まず、なぜ「殻ごと」がだめなのか。理由はシンプルで、中身が凍って膨らみ、殻が内側から割れるからです。卵の中身は大部分が水分です。水は凍ると体積が増えるので、その力で殻が押し破られます。

問題は、割れたあとにあります。卵の殻は、外から菌が入るのを防ぐ壁の役目をしています。ひびが入ると、そこに入口ができてしまう。とくに気をつけたいのがサルモネラ菌で、卵にまつわる食中毒のおもな原因です。しかも、冷凍しても菌は死にません。低い温度では増えないだけで、解凍して常温にもどれば、割れ目から入った菌が増えることもあります。こうした理由から、卵を殻のまま家庭で冷凍することは、一般にはすすめられていません。

殻ごと凍らせた卵にひびが入った様子。中身が膨らんで殻を内側から割ることを手描きで示す

凍らせるなら、殻から出して溶き卵に

では、どうすればいいか。答えは、殻から出してしまうことです。

いちばん手軽なのは、溶き卵にする方法です。卵を割って黄身と白身をよく混ぜ、冷凍用の袋に入れて平らにのばすか、製氷皿で小分けにして凍らせます。製氷皿を使ったときは、凍ったら保存袋に移しておくと場所をとりません。

使うときは、冷蔵庫にうつして解凍するか、凍ったまま加熱調理へ。卵焼きやスクランブルエッグ、かき玉汁など、火を通す料理にそのまま使えます。白身だけが余ったときも、白身は冷凍にとても強く、解凍してもほとんど元のまま。メレンゲなどにそのまま使えます。

大事なのは、解凍した卵は生では食べず、加熱して使うことです。冷凍して解凍した卵は、食感の面でも生食に向きませんし、なにより加熱がいちばん安全です。保存の目安は、溶き卵で2週間ほど。冷凍でも味は少しずつ落ちるので、早めに使い切ります。

溶き卵を保存袋に平らにのばし、製氷皿で小分けにして冷凍する様子。使う分だけ取り出せることを手描きで示す

もっちり固まる「冷凍卵」の正体

ここまで「殻ごとはだめ」と言ってきましたが、じつは近ごろ、あえて殻ごと凍らせる「冷凍卵」が人気を集めています。解凍すると黄身がもっちりと固まり、醤油漬けにすると濃厚なひと品になる。その食感の変化が面白がられ、料理サイトでも定番になっています。

作り方はかんたんです。殻をよく洗って水けを拭いた卵を、保存袋に入れて一晩凍らせる。食べるときは水にさらしながら殻をむき、冷蔵庫でゆっくりもどす——これだけです。凍る途中で殻は割れますが、どのみちむいて捨てるので気にしません。

なぜ、黄身だけがこんなふうに固まるのでしょうか。カギは氷の結晶です。黄身が凍るとき、中の水分が氷の粒に変わり、まわりのタンパク質から水を奪っていきます。水を失ったタンパク質(脂質と結びついたリポタンパク質)は、たがいに寄り集まって固まる。これが黄身のもっちり食感の正体で、ゲル化と呼ばれます。しかもこの変化は元にもどりません。いちど固まった黄身は、溶かしてもなめらかには戻らない。低い温度そのものより、凍って氷ができることが引き金です。

DATA

お菓子やお惣菜の卵は、なぜ凍らせてもなめらかなのか

工場でつくられる冷凍の卵(液卵)は、家庭の冷凍卵のようには固まりません。凍らせる前に塩や砂糖を少し混ぜておくと、黄身のゲル化がおさえられるからです。加糖された冷凍卵黄などは、アイスクリームや洋菓子の材料として広く使われています。ひと工夫で、あのもっちり化を止められるわけです。

ただし、冷凍卵の醤油漬けは生のまま食べる料理です。生卵である以上、新鮮な卵を使い、殻をむいたら早めに食べるのが基本になります。気になる場合や、高齢の方・小さな子ども・妊娠中の方は、生では食べずに火を通すと安心です。サルモネラ菌は熱に弱く、白身も黄身もしっかり固まるまで加熱すれば心配ありません。

ゆで卵は、逆に冷凍に向かない

「では、先に火を通したゆで卵なら安心して凍らせられる」。そう思いたくなりますが、ここにもう一つの落とし穴があります。ゆで卵のまるごと、とくに白身は、冷凍に向きません

家庭の冷凍庫は、凍るまでに時間がかかります。その間に白身の中の水分が抜け、解凍すると目の粗いスポンジのように、かたくパサついた食感になってしまいます。生の白身が冷凍に強いのとは、ちょうど逆です。

いっぽうで、ゆで卵でも黄身だけなら、冷凍しても食感はあまり変わりません。炒り卵や錦糸卵、薄焼き卵、玉子焼きのように、ほぐしたり火を通して形を変えたものも冷凍できます。まるごとの白身という形が、いちばん冷凍に弱いのです。

早見:凍らせていい卵、いけない卵

  • ○ 向いている:溶き卵(小分け)/生の白身だけ/黄身だけ/炒り卵・錦糸卵・玉子焼きなど火を通したもの = いずれも加熱して使う
  • △ 生で楽しむ人気の技:殻ごとの冷凍卵(醤油漬けなど)=新鮮な卵で、むいたら早めに。高齢の方・幼児・妊娠中の方は加熱を
  • × 向かない:ゆで卵のまるごと・ゆでた白身(スポンジ状になる)

共通するコツは、新鮮なうちに、小分けにして、早めに使い切ること。溶き卵は加熱して、殻ごと冷凍卵は生食なら新鮮なうちに——この線引きだけ覚えておけば、卵は冷凍庫でむだなく使い回せます。

まとめ

  • 卵は冷凍できます。分かれ目は「殻から出して形を変えるか」。殻ごと・そのままは避けます。
  • 殻ごとはひびからサルモネラ菌などが入るおそれあり。人気の冷凍卵を生で楽しむなら、新鮮な卵で、むいたら早めに。心配なら加熱を。
  • 溶き卵と白身は冷凍向きゆで卵の白身は不向き。溶き卵は解凍後に加熱して使います。

「生卵は、冷凍できないの?」という問いへの答えは、「できる。ただし、殻から出してから」。次に卵が余ったら、殻から出してひと混ぜし、平らにして冷凍庫へ。ちょっとした形の工夫が、卵をむだにしないいちばんの近道です。


出典情報

この記事は特定の一本の論文ではなく、公的機関・業界の情報と、食品科学で広く知られた知見をもとにまとめています。

  • 殻ごと冷凍の注意・サルモネラ菌・生卵の扱い(新鮮なうちに/加熱すれば安全/体調に不安のある人は生食を避ける):厚生労働省・自治体(保健所)や食品衛生団体による、卵の衛生的な取り扱いの一般的な注意
  • 卵の冷凍・解凍の目安、向き不向き:農林水産省の卵に関する情報、および食品の冷凍保存で広く知られた知見
  • 黄身のゲル化(凍結による不可逆的な固まり)と、加塩・加糖による抑制:卵の加工・食品科学で一般的に知られた知見。加糖・加塩した冷凍卵黄は製菓・加工用として広く流通しています。

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